小型赤道儀でもウォーム軸受けにベアリングを使った機種がありますが
オーバーホール時に感じたことについて。
一つはベアリングの与圧。
赤道儀のウォーム軸には大きなスラスト力がかかるので
両端からある程度の力で締め付けていますが(=与圧)
小型のボールベアリングに大きな与圧を与えると
ゴロゴロした回転となり滑らかな回転はできません。
写真上部はEM-200のウォーム軸周りですが
たまに与圧が極端に強いものがあります。
強すぎるとウォーム軸は引っかかったような回転となり
ピンピンと跳ねるような追尾になるようです。
原因は良く解りませんが鋳物のハウジングが痩せたりするのでしょうか?
もう一つは軸の偏芯。
ウォーム軸そのものの偏芯は1/100mm以下の精度で加工されている
と思うのでが,ベアリングを使用する場合,軸外径とベアリングの内輪の
公差が大きいとその分ウォームの偏芯が増えてしまい
(相殺される場合は減りますが)Pモーションが増加します。
オーバーホールでは精度に影響しますのでここは基本的には分解しませんが
何らかの理由で分解する場合
EM-200では簡単に抜けるので1~2/100mm程度の公差はあるようです。
同赤道儀は追尾精度にばらつきがあると言われるのはもしかすると
これが原因しているのかも知れません。
与圧はオーバーホル時に再調整できますが偏芯はどうしようもありません。
組んでは追尾テスト,また分解,追尾テストの繰り返しで最良となる
点を見つけるのは気が遠くなる作業ですからね。
因みに,下の写真は別の赤道儀のものですがこれは専用工具を
使わないと抜けません。
(専用工具での抜き取りは交換が前提ですので,取り外したベアリングは
使えなくなります。
組込時は新品のベアリングを専用のヒーターで暖めて差し込みます)
またこの偏芯を嫌ってミタカの一部や旧アトラクス(初期型)は
軸そのものがベアリングのボールと接する構造のものもあります。
またスラスト方向のみベアリングを使った機種もありますがこれは
ベアリングを使ってないものと同じでPモーションに影響するのは
軸の偏芯のみです。