以前,長崎の知人が古い30cm反射赤道儀をリニューアル(天文ハウストミタで施工)
されましたが,モーター廻りの改造(自動導入仕様)は私がお手伝いしていました。
オリジナルは下の写真のようにウォーム軸とモーター軸が直交するレイアウトのため
初段にウォームギヤによる減速を採用しています。
そのウォームギヤやホイールの精度が追尾に影響し
周期の短いPモーションが発生していました。
(12秒周期の小刻みな波も含め,トータルで約+-3.5~4.0秒)
Pモーションの値はオートガイドを前提とすれば充分に小さいのですが
周期が短いためオートガイドが追従できずハンチングの原因になっていたそうです。
そこでメインのウォーム軸をギヤヘッド付きのモーターでダイレクトに駆動する
改造を行いました。現地作業なので手作業です。
改造後の写真です。
直結なのでモーターが張り出しますが追尾に影響を与える要素がなくなります。
カップリングも偏芯の出ないスリ割クランプタイプを使っています。
改造前後のPモーションの比較です。(PHDでガイド信号をカットしています)
上が改造前で12秒周期の波を含めて,4分間のモーションが,約+-3.5~4.0秒
下が改造後で+-1.5~1.7秒に改善されています。
下の写真は改修後30cmF6+Atik383L+による「オートガイドなし」の5分間画像です。
以下はご本人からのメールで,結果に大変ご満足いただき改修の甲斐がありました。
殆ど使われていなかったスクラップ同然の古い据付型30cm反射赤道儀を
ミラーも含めリニューアル(赤道儀や鏡筒は全分解~再塗装,ミラーは再メッキ)
されていますがミラーの精度も高いとのことでした。
今回,1,800mmを5分間のノーガイドでもほぼ点像になるほどの追尾精度が
得られたことから古い機械に手を入れて大切に使う意義を再認識しました。
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先日は、ありがとうございました。
あの晩、早速追尾テストをして、良好な(劇的な)結果を得ました。
以前は12秒周期の波を含め、4分間のモーションが約+-3.5~4.0秒ほどあったのもが
改良後+-1.5~1.7秒程度になっているのには驚きました。
(天頂付近の状況ではありますが)。(PHDguide画面中縦軸1目盛りが、約3秒相当)
改良後グラフ画像の左側にあるM1の画像は30cmF6+Atik383L+による
「オートガイドなし」の5分間画像です。
天頂付近の条件下での限定的な状況ですが
このようなポテンシャルを秘めた機器であることが確認できてよかったです。
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下の写真は改修後にテスト撮影された写真です。
この時点で赤緯のモーターはついていないので極軸側のみのガイドとなっています。
(通常でも赤緯はガイドしない方が結果が良いとのことでした)
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天文ハウストミタからリニューアル時の写真をいただきましたのでご紹介します。
バーナーで加熱しないと分解できないほど腐食していたそうです。
これほど錆びていたウォームギヤやホイールですが手入れすると
最初の写真のようにピカピカになります。
見かけはともかく,±1秒台の追尾を実現できるとは驚きです。
ハウジングやウォームホイールは鋳物なので特有の経年変形が発生していました。
一部の軸廻りは旋盤加工を行っております。