以前ウォームホイールの直径と追尾精度について触れましたが
今回は,ウォームホイールの歯数とバックラッシュの関係について一言。
赤緯軸は極軸と異なり常に一方向に回転する訳ではないので
逆転時のバックラッシュが問題になります。
眼視の時はレスポンスが悪くても我慢できますが撮影ではガイド不良の
要因にもなるようです。
このバックラッシュの原因の殆どは駆動用のモーターのギヤヘッドの
バックラッシュに起因する事は先日ご紹介しましたが
同じモーターの場合,赤緯のホイールの歯数が多ければ
バックラッシュは少なくなります。
赤緯軸を同じ角度回転させるために必要なモーターの回転角度を
考えれば当たり前の事ですね。
同じ理由で,モーターとウォーム間のギヤ比でも変わります。
以前のNJP用のPD-5XY等は1:5の減速でしたがEM-200は1:1です。
NJPのホイールが144枚,EM-200が180ですので計算上では
NJPのバックラッシュが1/4になります。
(実際にはこれにウォームホイールとスクリューの遊びや
伝達ギヤの遊びが加わりますが)
写真はNJPとMS-5のウォームホイールです。
MS-5のは大きさもさることながら歯数が約2倍ですのでモーターの
バックラッシュが全体に影響する量は計算上半分になります。
またMS-5はウォーム軸とモーターが直結ですので外部ギヤの
噛み合いによる遊びも無くなりさらに小さくなります。
実は,ここで言いたかったのはNJPとMS-5の比較ではなく
私のお気に入りの90Sの事です。
90Sは赤緯軸の扇形ギヤによる部分微動を敬遠する意見も
耳にしますが,私は扇形ギヤだからこそ実現出来たメリットの
方が大きいと思います。
不動点から鏡筒取付面までが短い事や常に観測者側に
向くバンド式のクランプレバーなどですが,
何と言ってもガイド撮影においては,扇形ギヤの能力は
歯数240枚のウォームホイールと同じです。
赤緯の修正には144枚のNJPより優れていると思うのです。