動力用は別として,位置決め用モーターと組み合わせる減速機にとって
バックラッシュは厄介な存在です。
一般的な平ギヤを使った減速機では,ハイブリッドモーターとセットの
高級なものでも1度程度,小型赤道儀に使われるPM型では3度程存在します。
(メーカーカタログ値で実際はこれより小さくなっています)
仮にバックラッシュが1度のギヤヘッド付きハイブリッドモーターで
赤緯軸を対恒星時の100%相当で正逆回転した場合
外部の伝達ギヤやウォームの遊びを「0」と仮定しても,実際に赤緯軸が
動き出すまでの時間は,600秒×1/360度=1,7秒(ウォーム歯数144枚時)
つまりモーターだけで2秒弱の不感帯(=バックラッシュ)が存在します。
安価なPM型は上記より大きく,これに伝達ギヤやウォームホイールの
遊びを加算すると,修正をかけてから5秒以上は反応しない状態が続きます。
本来,撮影時の赤緯の駆動は極軸ズレの補正動作であり
一方方向にしか行われないのでバックラッシュがあっても大した問題では
ありませんが,外乱が入るとハンチングを起こしたり
オートガイダーがキャリブレションできないなどの不具合が起きる場合もあるようです。
そこでバックラッシュを排除するには減速機を使わなければ良いのですが
モーター単体では,トルクを確保するために大きなモーターとなる事や
モーターに大電流を流す必要があるなど移動用の小型赤道儀では
単純ではありません。
今回紹介するハーモニックドライブは位置決め用モーターにとって理想の
減速機です。
・バックラッシュはゼロ
・常時ギヤ全体の1/3程度が噛み合うためギヤのピッチ誤差が平均化され高精度
・高トルク
・低騒音
など優れた特性です。
ハーモニックドライブの原理と動作説明(動画あり)に興味のある方は
以下のサイトを参照ください。
弾性変形する柔らかい歯車がミソです。
柔らかな脳味噌でないとこんな発明はできませんね。
http://www.hds.co.jp/principle/index.html
良いことばかりのハーモニックドライブですが小型赤道儀が買えるほど高価です。
今回,幸運にもまとまった数の中古を確保できました。機器取り外し品ですが
機械的な劣化は殆ど無いものです。
5相マイクロステップのAGS-10とハーモニックドライブの組合せは
最強の赤道儀駆動装置と言っても過言ではないでしょう。
中古のモーターを利用する事で,一式の価格はほぼドライバーのみの価格です。
数量限定でセット販売しております。