一般的な小型赤道儀の赤緯側モーターは,消費電流を抑える観点から
駆動されていないときはステッピングモーターの電流を遮断しています。
K-ASTEC製の自動導入モーターも据え付け用のAGS-10やAGS-100と
特別にご要望があったAGS-1B以外は全て赤緯側は電流を遮断しています。
ステッピングモーターは
・電流を流したままで回転指令を“0”にした場合と
・電流を遮断した場合は
いずれも回転しませんが,後者は保持トルクを失うため
モーター軸の回転がフリーになってしまいます。
観望目的では遮断しても全く問題ありませんが,オートガイド撮影時は
モーターの回転に対して赤緯軸の回転がスムーズでない赤道儀は
赤緯修正時間が極端に短いパルスでは赤緯軸が回転しない事があります。
モーターはガイド指令の短いパルスで僅かに回転しますが,保持トルクがないため
指令が無くなると回転部からの反発力でモーターは逆回転してしまうのです。
このような場合はガイドグラフをみると修正量が蓄積して
ある値になると一気に動くためノコギリ状になります。
赤緯の微動軸を手で回した際,反発力を感じる赤道儀で経験しています。
また,タイミングプーリーを使った駆動方式など
モーター廻りのバックラッシュが無い場合は
電流を遮断するとモーターが極僅かに回転する影響が出てしまいます。
(基本ステップが200のステッピングモーターを64分割のマイクロステップ
駆動している場合,ある特定の位置から次のステップ(モーター軸で1.8度)までは
64個のパルスで回転しますが,仮に32個目で停止していた時に電流を遮断すると
特定の位置に戻るか,次のステップまで進んでしまいます)
この量はギヤ駆動の場合やギヤヘッド付きのステッピングモーターでは
あまり問題となりませんがベルト駆動の場合ガイドに影響がでます。
前置きが長くなりましたが,MTS-3SDIはこの赤緯側の電流を遮断していましたが
今回,メーカーにファームウエアのアップデートを依頼し
常時電流を流すファームも作ってもらいました。
(ディスプレイを付けたMTS-3では,古いファームでも常時電流を流すように
設定できましたが,電源を切ると初期状態に戻っていました)
上の90Sの写真のようにベルト駆動では明らかに差がでますので
今後発売するMTS-3を使った機種では全て電流遮断なしのファームで出荷します。
これに伴い当初発表の消費電流が変わったことをお詫びいたします。
なお,消費電流の観点から遮断をご希望の場合は遮断のファームで納入いたします。
GP用とSX系用はギヤ駆動なのであまり影響はありませんが
初期ロットは電流が遮断されますのでご希望の方はファームを書き換えいたします。
(後日個別にご案内いたします)
下の写真はEM-100用のMTS-3自動導入システムです。
90Sも含め,今回の記事の内容と直接関係ありませんが
メーカのご協力で1月輸入分のMTS-3に余裕が出たため製品化する事としました。
90S,EM-100ともバックラッシュ0のベルト駆動で圧倒的なレスポンスを発揮します。
追加のご要望の多いビクセンSX系用も含め,12月ロットとして
SX,90S,EM-100用合わせて10台を受注できますのでご希望の方はご連絡ください。
いずれも12月末までの受け付けで1月末~2月の納入予定です。
---------90S,EM-100とも全て終了いたしました。(1.27追記)------------
上の写真はまだパネル廻りの機器は取り付けていない状態のイメージ写真です。